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【第2章】株式会社設立

「定款の作成(変態設立事項)」

今回は、変態設立事項と呼ばれる特殊な定款の記載事項について考えてみたいと思います。その前に前回、絶対的記載事項以外の相対的記載事項、任意的記載事項について丸覚えすることは得策ではない旨のお話ししましたが、簡単にこれらの違いにつて説明します。絶対的記載事項については以前にお話ししたとおりです。相対的記載事項とは、定款に記載しなければ効力が生じない事項です。今回ご紹介する変態設立事項もこの相対的記載事項です。相対的記載事項の根拠条文は会社法の所々にあります。任意的記載事項とは、定款以外で決定しても良い事項です。つまり、定款に記載してもしなくても良い事項です。選択肢が多い分、実務家としての力量を問われる部分です。

ここからが今回の本論となります。株式会社の設立にあたり、会社法第28条に掲げる事項がある場合には定款に記載しなくてはなりません。一般的な株式会社設立では関係ない条文なので変態設立事項と呼ばれているのですが、会社法理論と実務上の扱いにつき論点が沢山ある事項です。

会社法第28条の変態設立事項は4つあります。言葉の説明ばかりでうんざり・・・という方もご安心ください!実際に実務で登場する記載事項は現物出資のみといっても過言ではありません。その理由を説明します。

変態設立事項を原始定款に記載した場合、定款認証後、遅滞なく家庭裁判所に検査役の選任を申し立て、選任された検査役の調査を受けなくてはならないのが原則です。(会社法第33条参照)ただし、現物出資、財産引受には例外規定があり、目的財産の価額が500万円を超えないとき、目的財産が市場価格のある有価証券のとき、目的財産の価額が相当であることにつき弁護士・税理士等の証明を受けたときは検査役の選任は不要となります。実務上は原則と例外が入れ替わって例外規定を活かして運用することが多く、検査役の選任を申し立てるのはレア中のレアケースといって差し支えないと思います。
新規の株式会社設立は発起人1名、資本金の額が100万円~300万円の会社が多いですから、そのような規模の会社でコストも時間もかかる変態設立事項を原始定款に置くことは「百害あって一利なし」です。ましてや1万円でも安く設立したいという傾向が強い昨今ですから、変態設立なんてありえませんよね・・・(@_@;)。

それでは、上記に掲げた4つの変態設立事項について、実務でどう運用しているかを解説します。

1.現物出資

会社に対して金銭以外の財産を出資することです。たとえば、資本金の額200万円の株式会社を設立したいが、現金を150万円しか用意できないので不足分50万円は自動車を現物出資することにより補うようなケースです。定款に出資者の氏名(名称)、現物出資財産とその価額、出資者に割り当てる設立時発行株式の数を記載する必要があります。
定款の記載事項はこれだけですが、登記申請書の添付書類には、財産引継書、設立時取締役の調査報告書、資本金の計上に関する証明書などの書類が必要になります。定款に記載された現物出資が適正に行われたことを証明する必要があるから金銭出資より添付書類が増えてしまうのです。
現物出資は実務でもたまに依頼がある事項です。が、ほとんどは価額が500万円未満ですし、500万円以上の場合も弁護士・税理士等に価額が相当であることについての証明書を作成してもらいますので、検査役が登場することはまずありません。価額が相当であることの証明書作成費用は10万円以上かかることもあります。設立報酬よりも高額となることもあるので、事前によく確認しておくことが必要です。
余談ですが、発起人以外は現物出資をすることはできません。(会社法第34条第1項・同法第58条第2号)この問題は募集設立の場合のみ考慮することになります。(後日解説しますが、発起人以外に株主となる人を募集する設立方法があります)もっとも、手間も出費も増える募集設立は全くといっていいほど利用されていません。(私も会社法施行後募集設立を受託したことはない)だから余談なのです。資格試験では大事なポイントかもしれませんが、発起設立では発起人以外に出資しませんから、実務でこの論点をあまり深く考える必要はありません。

2.財産引受

株式会社の設立後すぐに会社が有償で譲り受ける財産があることが設立準備段階で決定している場合には定款に記載しなくてはなりません。たとえば、製造業の会社設立で、会社成立後に業務に必要な機械設備を譲り受ける場合等が考えられます。機械設備の市場価値が100万円であるのに、1000万円で譲り受けてしまうと会社に損害を及ぼしますから、変態設立事項として定款に記載することが定められているのです。譲渡す財産、価額、譲渡人の氏名・名称を記載する必要があります。
通常の株式会社設立の依頼でこの財産引受を定款に記載するケースというのはほぼない思います。原始定款にわざわざ財産引受を記載して検査役の検査を受けるなんて面倒なことはしなくても、設立後に株式会社と譲渡人との間で売買契約をすれば同じことなので・・・。会社に損害を及ぼすか否かについても設立後の会社で株主総会や取締役会を開催して判断すれば良いわけです。会社法の解説本でもこの財産引受についてはさらっと概略だけ触れて終わりということが多いです(笑)

3.発起人が受ける報酬及びその他特別の利益

株式会社の設立に際し、発起人が会社成立まで一生懸命準備を進める労力に対して、設立後に会社の財産から「ご苦労様でした」と報酬を渡す場合は定款に記載することになります。その報酬、利益、発起人の氏名・名称の記載が必要となります。
これまた実務ではまず記載しない事項です。現物出資や財産引受のような例外規定が使えないため、必ず検査役の検査が必要となります。会社から受ける報酬や利益よりも検査にかかる手間や費用負担のほうが大変となることが明白だからです。

4.株式会社の設立に関する費用

ここでいう設立に関する費用とは、たとえば設立準備事務所の賃料や行政書士・司法書士等に支払う報酬等が該当します。が、実務上はこの費用は定款に記載しません。この費用は法人税法基本通達8-1-1により、定款に記載しなくても税務上「創立費」として会社設立後の経費とすることが認められているため、発起人の自己負担ということにはなりません。であれば、あえて検査役選任と検査が必要となる変態設立事項を記載することは考えにくいのです。
なお、定款認証手数料・定款に貼付する収入印紙・出資払込銀行への手数料・裁判所が決定した検査役の報酬・設立登記の登録免許税はこの会社設立に関する費用には含まれません。この5つは法律上必ず必要な費用ですのでわざわざ定款に記載する必要がないからです。(会社法施行規則第5条参照)

次回は、株式会社設立の「出資」について考えてみたいと思います。

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