「株主総会の決議の省略・株主総会議事録」
今回は、株主総会の決議の省略と株主総会議事録の作成についてです。
1.株主総会の決議の省略
株主総会の決議の省略とは、株主全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をした場合には株主総会の決議があったものとみなす規定です。(会社法第319条参照)つまり、株主総会の開催自体を省略してしまう制度です。会社法上、決議があったものとみなされるわけですから、定款に記載がない会社でも利用できる制度です。(一方、取締役会の決議の省略については定款の定めが必要です。理由については後述します。)
会社にとっては大変便利な制度なのですが、株主が1人でも同意しなかったらこの制度は使えませんので、通常、株主が10名以下の会社で利用されることが多いです。
また、この制度のことを通称「書面決議」などと呼びますが、実際に株主総会が開催される「書面による議決権行使」の制度とは全く別の制度ですので混同しないようご注意ください。
2.株主総会議事録
株主総会の議事については、株主総会議事録を作成することが義務付けられています。(会社法第318条参照)作成した株主総会議事録は本店では10年間、支店では5年間備え置く必要があります。株主や会社債権者は営業時間内であればいつでも議事録の閲覧や写しを請求することができます。
株主総会議事録には、開催日時・場所、議長、出席役員、議事の内容・結果、議事録作成取締役などを記載することになっています。(会社法施行規則第72条参照)株主総会の決議を省略した場合でも、株主総会議事録は作成しなくてはいけません。決議があったものとみなされた内容を議事録に記載し、株主全員の同意書とともに保存しておくことになります。
株主総会議事録の捺印については、代表権のある取締役を選任した株主総会議事録以外は法令上の規定が存在しないため、印鑑に制限がありません。理論上は100円ショップで買った認印でも良いことになりますが、そんな株主総会議事録ではまず本物かどうかを疑われますし、何より会社の信用に影響してしまいます。偽造防止や真実性の担保の観点からも通常は会社の代表印を押印します。
次回は、株主総会のその他の諸問題について考えてみたいと思います。